琉球舞踊写真集 舞踊家のご紹介6
次にご紹介するのは、親川あやのさん(「諸屯」)。
実は、誰に踊っていただくか、どこでどのように撮影するかについて、一番悩んだのはやはり諸屯でした。琉球舞踊の中でも特に難しい踊りではないかと思います。現実でありながらも現実ではないような雰囲気を醸し出しつつ、怨念みたいなものを感じさせながらも生命力の表現は最小限となるような、そんな写真を目指していました。
彼女を知ったのは、ある沖縄民謡歌手の横で踊っているところを撮影したYouTubeの動画でした。諸屯といえば、おそらくかなり熟練の女性が踊るというイメージがあるのではないかと思いますが、それとは少し異なる印象の彼女を見て、なぜか諸屯の世界を表現しつつも、そこに何か新しい風を吹き込めるのではないかと直感したのです。
元々「元気娘」のような印象を持たれることが多かったようで、また、諸屯は練習したことがあるだけで実際に踊ったことはなかったため、諸屯を依頼されたことに多少の驚きがあったようにも見受けられましたが、もう私自身が良い写真になることを確信しているのだからどうしようもありません。踊っていただくしかないのです。
撮影当日。最初こそ少し戸惑いもあったようですが、徐々に諸屯の踊りの世界に入って行かれました。憑依体質というべきか、諸屯の踊りの主人公が徐々に乗り移っていくかのように感じました。そして、日が暮れていくとともに撮影場所の荒々しい米須海岸の風景とも相まって、より濃い写真となっていきました。その撮影結果は、写真集に掲載した写真のとおりです!
一言付け加えさせていただくと、上のように諸屯の写真には涙を流しているものも含めましたが、これは踊りのことを思いながら実際に流れ出た涙です。フェイクは一切ありません。撮影者としても非常に印象に残る、貴重な体験をさせていただきました。
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